20170909 『ダンケルク』
☠️CAUTION‼︎☠️
この記事は映画『ダンケルク』の内容に触れています。
ネタバレを避けたい方は鑑賞後に読んでください。
ノーランが『実話』に負ける。
クリストファー・ノーラン監督作品『ダンケルク』を観てきました。
『映画を選ぶ基準』ってのは人によってイロイロありまして、
『予告編で面白そうだったから観る』
『世間で話題になっているから観る』
『好きな俳優が出ているから 観る』
『ホラー映画(特定のジャンル)が大好きだから観る』
『フィルマークスとか、前田有一の超映画批評で高得点だったから観る』
『木根さんの一人でキネマで取り上げられたから観る』
『好きな女優がおっぱい出してるから観る』
『クソ映画ハンターだから、酷評を極めたゴミ映画を片っ端からあえて観る』
『どっかの32歳独身映画マニアが仕事そっちのけでオススメしてる映画を観る』etc…
とまぁ、数え出したらキリが無いのですが、個人的に自分がオススメしたいのは
『映画は監督で選ぶ』
というものです。
音楽で言ったら自分の好きなバンドのアルバムを聴くのと同じで、有名かつ個性的な監督の作品はオリジナル、タイアップ問わず監督の特徴や作家性が出ております。
監督のスタイルや持ち味にハマったら、その監督が撮った作品は芋づる式にどれも面白くなります。(たまに失敗作とか駄作もありますけど)
例えばエログロナンセンスかつ難解な作風が好みならデヴィッド・リンチやクローネンバーグ
もうちょいエンタメ指向なら園子温
大破壊が観たいならエメリッヒ
万人受けかつ批評家にも評価が高い作風ならイーストウッド
鳩と二挺拳銃とスローモーションが観たいならジョン・ウー
斬新な映像が観たいならデヴィッド・フィンチャー
『俳優より構図でしょ』ならキューブリック
『地雷上等‼︎』なら三池崇史
『童貞ナルシスト』なら新海誠etc…
で、今作『ダンケルク』を撮ったクリストファー・ノーラン監督の作品は『だいたい』面白いです。
『だいたい』というのは、『フォロウィング』と『インソムニア』を観てない のと、『プレステージ』がイマイチ好きになれないからです。
とはいえ、少なくとも『クリストファー・ノーラン監督作品』と銘打ってる作品は無条件に1800円…いや、IMAXでないとその本領が発揮されないので、無条件に2200円を払える監督です。
音の迫力とかケタ違いですし、絶対にIMAXか極音上映で観るべき作品となっております。
とにかく今日、世界中でヒット作連発なこの監督…いまどき珍しい『ハズレの少ない監督』なのです。
その彼の持ち味と言えば…
CGを極力排して、実写にこだわったアクションの迫力
重厚かつ不安を掻き立てるサスペンスフルな音楽
雰囲気は超一級なのに、ちょっとヌケてる作風
そのスタイルは言うなれば、『B級映画をクソ真面目に撮る監督』というべきでしょうか、ファンタジーであればあるほど、実写の迫力にこだわったアクションが際立ち、息を呑む光景に圧倒されるのです。
だからこそ、今作の『ダンケルク』は、失敗作だと思っています。
陸海空の3つの視点で同時進行するドラマ
説明を最小限に、状況をただただ、冷徹に描く
顔の見えない敵に襲われる恐怖
『実写』にこだわった重量感と迫力
ノーラン監督が挑む、初の『実話』作品
実話の映画化やアメコミの実写化、リメイクが流行のハリウッド業界において、その作品作りは今日的と言えますし、なおかつ『マッドマックス・怒りのデスロード』のような『シンプルかつ実写の迫力を十分に味わえる』作品に仕上がっており、ノーラン監督の新境地でありながら、同時に持ち味を活かした作品になっています。(内容も106分で、ノーラン作品にしては短めです)
そして、IMAX版で観ると判る『音の暴力』というべきか、劇場全体を震わせる圧巻のサウンドに身も心も蹂躙されます。IMAXシアターでないとその凄さを十二分に体感できないという点では、 紛れもなく『アトラクション映画』であり、DVDではその魅力が伝わらない映画であると言えます。是非とも劇場で体感して欲しい作品です。
ここまで褒めておきながら、『失敗作』であると感じる理由は、ノーラン監督初挑戦である、『実話の映画化だったから』です。
ノーランのこだわりである『実写の迫力』は、作品自体が『インセプション』や『ダークナイト』のような純然たるフィクションだからこそ際立っていたのであって、全編実話の作品ではこの手法が効果的ではなかったと思います。
『メメント』だってわざと時系列を分解し複雑に見せるなど、凡庸な物語よりも、トリッキーかつ映像としての面白さや意外性を求めていたと思います。(人によっては凡庸な作品を複雑に魅せる編集方法に『ただの子供騙し』だと感じる人もいるかと思いますが)
コスプレ野郎が街を救う馬鹿馬鹿しい世界観の『ダークナイト』や、『 ノーラン版2001年宇宙の旅』というべき『インターステラー』で唐突に無機質な萌えロボットが出てくるなど、
『本格派』の雰囲気を纏いつつ、どこまでも外連味溢れる『嘘臭い』ファンタジーだからこそ、ノーランの重苦しくリアルな演出が活きていたと感じます。
今作の『実話をベース にした作品』では、そもそも実話であるゆえに『フィクションの中で光るホンモノ』を感じ取ることができず、即ち彼の持ち味が殺されてしまったと俺は思うのです。
そんなわけで、ミリオタの方を除いては、ちょっとこの作品に関しては素直に『面白い』と言える人は少ないと思います。
とはいえ、間違いなくこれはノーラン作品の新境地であると言えるので、ファンならば是非観るべきかと思います。
『映画ならではの迫力と衝撃』を、ぜひ味わってください。
お子様連れの方にも、グロシーン一切無しで、一夏の映画体験という意味では超オススメです。
仮に寝たとしても当方、一切関知しません。