2021/09/26 わかっちゃいるけどやめられない。『MINAMATA -ミナマタ-』
過去14年間、酒浸りの毎日を送ってきたので、最近は禁酒に励んでおります。
順調に痩せて体調も良くなっていく中、こないだ久々に飲んだらひどい吐き気と二日酔いで死にそうでした。
でもなんだかんだ言って、まだ飲みたいんだよなぁ…習慣とは恐ろしい。
いや、それは依存だろ。「わかっちゃいるけどやめられない」が依存なんだ。
そんなわけで、完全な禁酒にはまだまだ時間が必要なようです。
さて、こないだジョニー・デップ主演の『MINAMATA -ミナマタ-』を観てきました。
教科書でだれでも名前だけは学んだことがある水俣病を題材にした映画です。
実際に水俣病を取材し、世界に水俣病を知らしめたアル中カメラマン、ユージン・スミス氏をジョニーデップが演じています。
ジョニーデップは勝手にアタクシが食わず嫌いしてました。彼の映画はほとんど観たことがありません。『シザーハンズ』も『パイレーツ・オブ・カリビアン』も『チャーリーとチョコレート工場』も何もかも。『ギルバートグレイブ』だけは観たか。
なんとなくいけ好かないイケメンで、「キムタクが嫌い」みたいなノリで彼の映画に触れてこなかったのですが、そのジョニデが『MINAMATA -ミナマタ-』の主演兼プロデューサーとして世間に公害の恐ろしさを知らしめてくれたのです。
今回ばかりはジョニデに敬服します(何様だよ)。
「自国の問題だってのに、ハリウッド映画に啓蒙させられるなんて」と複雑な思いを抱く方も多いと思いますが、公害ってのは企業による環境破壊行為であって、国とズブズブの企業を、商業映画として糾弾する行為は難しいんですよ。アメリカには自国の暗部を映画にする文化がありますけど、多くの国はそうじゃない。
福島第一原子力発電所事故を描いた日本映画『Fukushima 50』だって、東京電力の名前は伏せられているし、メルトダウンを防いだ作業員たちの美談に終わっています。決して東京電力は非難されていません。そういうもんです。
豊かな暮らしを捨てられない私たちは、そう簡単に公害を糾弾できない。公害と向き合うことは、己の業と向き合うことでもあるのです。わかっちゃいるけどやめられないのです。
そして心のどこかで、公害は歴史とともにあるのだと、それが当然なんだと思う。もしくは思い込むのです。
今でこそSDGsみたいな言葉が持て囃されていますけど、高度経済成長期なんかは工場から出る煙で空は濁っていたでしょうし、オレが子供のころ(90年代)なんかは光化学スモッグ注意報は何度も出ていました。大気が汚れているなんて当たり前でした。
人類の繁栄には代償がつきもの…映画『MINAMATA -ミナマタ-』でも、有毒水銀を垂れ流す企業チッソで働く人々の葛藤が描かれています。そもそも水俣市はチッソの企業城下町であり、水俣病を告発し、会社に抵抗することは、自分たちの仕事を失うことでもあったのです。
声を上げることは難しい。でも、娯楽映画ならそれはできる。『ゴジラVSヘドラ』や『アビス』、『もののけ姫』など、環境破壊をテーマにした娯楽映画はたくさんあります。
声を上げる勇気がないなら、せめて映画を観て、己の業と向き合うのです。
わかっちゃいるけどやめられない。でも、わかっているだけ、少しはマシなのです(言い訳だってわかっているけど)。