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9割は映画、たまにアニメや本の感想。

20170205 『虐殺器官』

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「仕事だから。十九世紀の夜明けからこのかた、仕事だから仕方ないという言葉が虫も殺さぬ凡庸な人間たちから、どれだけの残虐さを引き出すことに成功したか、君は知っているのかね。仕事だから、ナチはユダヤ人をガス室に送れた。仕事だから、東ドイツ国境警備隊は西への脱走者を射殺することができた。仕事だから、仕事だから。兵士や親衛隊である必要はない。全ての仕事は、人間の良心を麻痺させるために存在するんだよ。資本主義を生み出したのは、仕事に打ち込み、貯蓄を良しとするプロテスタンティズムだ。つまり、仕事とは宗教なのだよ。信仰の度合いにおいて、そこに明確な違いはない。そのことにみんな薄々気がついているようだがね。誰もそれを直視したくはない。」
伊藤計劃虐殺器官ハヤカワ文庫JA 2007年)

 


新年あけましておめでとうございます(遅っw
RWBY VOLUME4』が終始鬱屈したムードのまま終わってしまい残念な俺です。

 

相変わらず休日は映画ばかり見て過ごしています。
困ったことに、最近はますます涙もろくなりました。

『ジャック リーチャー』ではトムの娘役の終盤の演技でウルウルし、
小松菜奈に名前を囁かれたいという不埒な目的(主人公の名前が一緒w)で観た『僕は明日、昨日のきみとデートする』でも鼻水垂らして泣き、
IMAX版&英語主題歌版含めて12回観た(⁉︎)『君の名は。』はもはやパブロフの犬状態…開幕5分で涙腺が決壊w


ムカデ人間2』も『冷たい熱帯魚』も『ブレインデッド』もメシ食いながら鑑賞できる俺ですが(『ソドムの市』だけは無理です…)、残念ながらここまで涙もろくなったのはおっさんになった証拠ですねw

 

 

さて、昨日は『虐殺器官』を観てきました。
癌により34歳でこの世を去った伊藤計劃デビュー作の劇場版です。あまりにも『TOO YOUNG TO DIE!』な作家であり、しかしながら(良くも悪くも)夭折したからこそ注目された感もあるのは事実です。


原作を知ったのはここ3年くらい前の話で、やたらと評価が高かったわけですが、初めて読んだ時の感想は『それほどでもない』でした。メタルギアとか頭文字Dとか映画『CURE』とか、様々なアニメ、ゲーム、映画が露骨に元ネタがわかる形で随所に挿入され、パロディ小説なんじゃないかと思うぐらいで、より洗練された文体である『ハーモニー』の方がいまでも好みです。(『屍者の帝国』は実質、円城塔の作品なので読んでない)


その後は作者のブログとエッセイを書籍化した『伊藤計劃記録』や、本人による膨大な映画評『伊藤計劃映画時評集』をまとめ買いしてすっかりファンになった次第。


ブログはまだ残っており今でも彼の文章はウェブ上で無料で読めるのですが、金を払って読ませる文体であることは間違いなく、映画、アニメ、小説に精通していた彼の評論の数々は、正直なところ本人の小説よりも面白いです。(存命だったなら『君の名は。』評をぜひ読んでみたかった)


…で、肝心の劇場版は原作ファンなら注目したい『あのシーン』がどういうわけだか描かれず(監督はあえて描かなかったらしい)、大変物足りない印象を受けました。


『PROJECT ITOH』と題した映像化企画の完結編がこの虐殺器官なのですが、映像化という点で屍者の帝国が個人的に一番面白かったというのはなんとも皮肉な話です。


とはいえ、ぜひとも映画ファンなら伊藤計劃の作品に触れていただきたいと思います。