タイムライン

9割は映画、たまにアニメや本の感想。

20180310 『シェイプ・オブ・ウォーター』

f:id:strawdog48:20190115035927j:plain


バレンタインジャンボ宝くじを3万円分買ったところ、見事に26000円分当選したオレです。


4000円も負けてるのに妙に勝った気分になるのが不思議。
パチンコで1000ハマって心身共に深く抉られたところからトントンまで巻き返した気分に似ていますね。まぁ負けは負けだと認めないあたり、ダメなギャンブラーだと自覚しています。


さて、映画『シェイプ・オブ・ウォーター』を見てきました。


本当は先週『ブラックパンサー』とハシゴして観る予定だったのですが、ブラパン鑑賞後にどこでもらったのかウイルス性胃腸炎に襲われ、絵面的にかなりバイオハザッてる地獄の2日間を過ごしたため鑑賞は断念。


まぁ悶絶して寝込んでいる間に今作がアカデミー賞作品賞受賞で箔がついたため、結果的に”満を持しての鑑賞”になったわけです。


さすがはアカデミー賞効果…21時のレイトショーなのに場内は結構賑わっておりまして、カップルも多数いましたよ。
素直に『グレイテスト・ショーマン』(クッソ面白いです)観ればいいものを…これカップル向けの映画じゃないですよマジで。


喋ることができず、恋人もいない、仕事は便所掃除か床磨きの中年のおばさんと半魚人のラブストーリーですよ。”この世界の片隅で”細々と生きている我々のような人間たちの歪な恋模様なのですよ。


日本を舞台にするなら、深夜のコンビニで週5で夜勤やってるブスなオバちゃんがカッパと恋に落ちるようなストーリーです。
絵面的にけっこう滑稽ですよね。

 

彼女の周りの人物もハゲのゲイとか黒人のおばさん、組織を裏切るユダヤ人など、マイノリティの象徴みたいな人物が多数出てきます。


そして半魚人…怪物(フリーク)との美しいラブシーン…この辺は本当に美しく撮っています。


あぁなんと美しい…と、素直に感情移入できればいいのですが、アカデミー賞作品賞受賞というブーストをもってしてもなんというかまぁ、うん、あんまし面白くないです。


今作は怪物フェチの監督が趣味で撮ったという以上の感想を見出せないですし、作品賞受賞に関してはLGBTやマイノリティへの牽制という意味合い以上のものを見出すことはできませんでした。
だいたいヒロインの名前からして『マイフェアレディ』を想起させますし(意図したかどうか知りませんが)、監督の猥雑な欲望がヒロインに投影されている有様が透けて見えるのがイヤなのです。エロゲーだろこれ。

 

何が言いたいかというと、今作は政治的な匂いがプンプンするサブカル映画でして、俺は作品賞は『スリー・ビルボード』にこそ相応しいと思っています。

 

異形や人外に対する偏愛/変愛模様を描いた作品なんてけっこうありまして、例えばSiriさん(秘書アプリ)に恋をしてしまう映画なら『Her 世界でひとつの彼女』(ド下ネタ満載です)、実験の失敗で醜く崩れ落ちていくハエ男との恋愛を描いた『ザ・フライ』(トラウマ級にグロい)、死体への異常な愛情を描いた『ネクロマンティック』シリーズ(検索しちゃダメです)などが挙げられます。

 

少々剣呑な発言になりますが、異形やマイノリティの恋愛模様は、それ自体が見世物小屋(文字通り、フリークショウ)のような俗っぽさ、特異性があってこそ、物語全体に可笑しみやドラマ性が醸し出されるのです。
ブロークバック・マウンテン』や『ブエノスアイレス』が普通の男女の恋愛模様を描いているならば、全くもって”面白くない”と思います。


そんなわけで半魚人とヒロインの恋模様はグロテスクながら美しく、それなりに映えるのですが、ヒロインがどうして半魚人に惹かれていったのかイマイチ分からないまま話は進みます。


ロクに感情移入できないストーリーは、しかしながら異形を扱った凡庸なラブストーリーに終始するならそれはそれでいいのですが、中途半端にエログロナンセンスに片足突っ込んでいるからタチが悪い。
ゲテモノ映画を期待した好事家にも消化不良な印象を与えるかと思われます。

 

デヴィッド・リンチやクローネンバーグ、昨今なら園子温監督と、エログロナンセンスを撮る監督は多数いますが、エログロナンセンスはそのまんまエログロナンセンスであるべきなのです。徹底的に苛烈で猥雑で冒涜的で禍々しくてアカンやつであるべきなのです。


見ちゃいかん、汚らわしい、ヤバいものを見た、もうやめてくれ、マジで吐きそう…でも顔を覆った指の隙間から微かに見える、ハードコア/核心…そういったものが感じ取れないのです。
今作はオナニーもセックスもバイオレンスも描いたくせに、コレはどこか絵空事ですよという監督の告白が聞こえてきてしまうのです。興醒めもいいとこです。

 

そんなわけで今作を観るくらいなら『スリー・ビルボード』か『グレイテスト・ショーマン』(くどいようですがクッソ面白いです)を観に行きましょう。
ぜひぜひ。