20171013 『猿の惑星 聖戦記』
カエサルは、去る。
『猿の惑星 聖戦記(グレート・ウォー)』を観てきました。
…さて、どうすっかなコレ。これほど未見の方に語るのが難しい作品は無いかと思います。
そもそも今作が『猿の惑星シリーズ』のリブート3部作の完結編なので未見の方にはコレ単品のハードルが高く、素人が那由多の言葉を尽くしてその面白さや魅力を語ったところで
「じゃああした、『猿の惑星 聖戦記』見てこよっかな♪」
とはならないでしょう。むしろ語る以前にタイトルを口にした時点で
「ってか、猿の惑星とかwwwwwwなにそれ猿wwwのwwwwわwwくwwせwwwwいwwwwとかwwwwwww」
と失笑を買うこと請け合いです。素直に『亜人』をオススメしましょう(クッソ面白かった)
さて、猿の惑星とかいうパンチの効いたタイトル。原題である『Planet of the Apes』を直訳しただけなのですが、その四字熟語っぽい語感と響きの良さでやけに耳に残り、
「見たことないけどタイトルくらいなら知ってる」
そんな方は結構いるかと思います。
こんな風に口に出してみてもアラ不思議、ちっとも違和感ないですね。
さて、気になる本編ですが、未見の方にこのシリーズの内容を最速かつ端的に説明すると
『猿と人類の戦争』となるのですが、
「猿と人類の戦争wwwwwwなにそれ猿wwwとwwwwじwwんwwるwwwwいwwwwのwwwwwww(以下略」
みたいに単なる Z級クソ映画臭漂うおふざけ映画みたいな誤解を与えること請け合いです。
でもこれをシリアスかつ大真面目にアクション大作としてやってるんだからしょうがねぇだろマジで。シーザーの面構えとか凛々しすぎるんですけどマジで。
シリーズ完結編かつ最新作の本編はCGIが発達し過ぎて、猿たちは(比喩ではなく)リアルで人間のようです。
『サルのような人間、あるいは人間のようなサル』…このシリーズの根底を支える重要かつ面白いトコは、『価値観、または対立する構造の逆転』というものです。あくまでサルと人間の戦争は基本プロットに過ぎません。
例えば旧シリーズの1作目なら、『サルが人間を支配する』『サルは極めて理知的に描かれ、人類は動物のように扱われる』などが挙げられます。
これ以降の続編でも『大量破壊兵器が神として崇められる』『1作目とは対照的に、サルが人間社会で翻弄される』『人間が今度はサルを奴隷として支配する』『サルがある掟を破り、人間となる』といった、対立する2つの関係の逆転が何度も描かれます。
もちろんリブート版にも同様の『逆転現象』や『相反する事象』が繰り返し描かれるので、その辺りに注目すると面白さが増すと思います。
例えば平和を望むサルの名前が『シーザー』であるとか。
この辺は旧作を知っているとニヤリとします。
いちおうオリジナル版のあらすじにも触れておきますが、1968年に制作された『猿の惑星』は、宇宙船のトラブルで謎の惑星に降り立ったクルー達が「馬に乗って言葉を話すサル達」に襲われるという衝撃的な展開から幕を開けます。
その星には人間もいるのですがまるで言葉を話せず、知的なサルが蛮族同然の人類を支配しているという地球とは真逆の環境の惑星で主人公は孤軍奮闘するのですが、その結末はあまりにも絶望的でした。
超絶有名すぎてもはやネタバレもクソもない衝撃のラストシーンを知っている方は多いと思うのですが、知らない方は敢えてこの旧作を見ないまま、リブートされた新3部作を見ることをオススメします。
もちろん旧作を知っている方がより深く物語を楽しめるのですが、なにせオリジナル版は50年も前の大昔の作品ですし、しかも旧シリーズは全5作という大長編ぶり。タイトルを上げると
『猿の惑星』(1968年)
『続・猿の惑星』(1970年)
『新・猿の惑星』(1971年)
『猿の惑星・征服』(1972年)
『最後の猿の惑星』(1973年)
と、猿猿多すぎて軽くゲシュタルト崩壊を起こしてしまいますね。
しかもほぼ年1ペースで作られるとかどんだけ人気なんだよマジで。仕事早過ぎだろ昔の制作スタッフ。
(当時経営難だった制作会社が人気にあやかって低予算で粗製乱造したという話もありますが)
あっ、ティム・バートン監督のリメイク版は黒歴史過ぎるので、無かったことになってます。オレの中で。
とてもじゃないですが忙しい現代人の方々には旧シリーズに手を出すのはオススメできないので、新リブート3部作の過去2作である
を予習してから完結編に臨みましょう。
ちなみに旧シリーズには人種差別とか冷戦とか核兵器の恐怖など、当時の社会的なテーマが織り込まれていますが、詳しく知りたい方は町山智浩先生の
『映画の見方がわかる本 (映画秘宝COLLECTION)2002』
を読むことをオススメします。
(たぶん絶版なのでアマゾン推奨)