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9割は映画、たまにアニメや本の感想。

20170811 『スパイダーマン ホームカミング』

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二度あることは三度ある‼︎


みんなの親愛なる隣人『スパイダーマン ホームカミング』を見てきました。


あんまりネタバレはしませんのでご安心ください。

 

 

 

 

 

 


『昔ミァハに見せられたことがある。九相詩絵巻という、鎌倉時代に書かれた絵だ。
ある女の人が死んで、変色して膨張し、腐敗して鳥獣に喰われるまでを描いた、九枚の絵巻物。それは大昔に書かれたものとは思えないくらい、とってもリアルで、生々しかった。

(中略)

「これが書かれた時代には、死はそこらじゅうにあったんだよ」』

伊藤計劃 著 『ハーモニー』 ハヤカワ文庫JA 2010)

 

 

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

 

 


九相詩絵巻(または九相図とも言う)とは、人が死んで腐敗して醜く膨張し、やがてウジが湧いて野良犬やカラスにその身を喰われ、バラバラになって土に還るまでを9つの段階に分け、絵として記したものです。


どうやら実在するようで、検索するとグロテスクな絵が大量に引っかかります。
実際に朽ちていく死体を観察して描写しているらしく、極めて生々しく不快感を催します。
(古い絵ですが非常にグロいので、興味のある方のみ自己責任で検索してください)


多くは修行僧が肉体への執着を棄て、悟りを開くためにこういった絵が書かれたらしく、実在の女性や、架空の人物とも噂される小野小町(絶世の美女)がモデルとして起用されているようです。

 


今の感覚で言えば、オレが激推しする津島善子ちゃんが死んで内臓が腐敗して内部から有毒ガスが発生して赤黒く変色して醜く膨れ上がって破裂して骨がむき出しになって野良犬に腐肉を食い千切られる様を見て


諸行無常‼︎ 煩悩払拭‼︎』


とか言ってるようなもんなのですが、想像するだに

「昔の人ってスゴい発想してたんですねぇ〜」

と感嘆せざるを得ません。ちなみにここで


「それはそれでいいかも」


とかヘンな気を起こすと18禁のリョナ画像を検索したり『ネクロマンティック』シリーズをアマゾンでポチるハメになるので正気に戻ってくださいマジで。

 

 

話が逸れましたが、肉体が不浄であるという思想だけでなく、正視できないほど変わり果てた人間の有様を詳細に描くことで


『死んだ人は帰ってこないし、蘇りもしない』


という、至極当たり前だけど受け入れがたい事実を目に焼き付けるために九相図は書かれたのではないかとオレは思います。

(或いは、『死は瞬間ではない』という事実を教えるために書かれたのではないかという推察もあります。詳しくは養老孟司先生の『カミとヒトの解剖学』を読んでみてください)

 

 

さて、今作の『スパイダーマン ホームカミング』は、2002年にトビー・マグワイア主演で初めて実写映画化された『スパイダーマン』三部作を再々リブート(キャスト、ストーリーを一新で作り直すこと)した作品です。


初代三部作のヒットを受けて2012年にリブートされた『アメイジング スパイダーマン』シリーズはアメリカ国内では興行的に振るわず、2作目でなんと打ち切り(世界的にはヒットしてるんですけどね)


コケた理由は恐らく、以前も触れましたが、主演のアンドリュー・ガーフィールド演じるピーター・パーカー像が、トビー版と違いすぎるというか、『あまりにもイケメンでリア充にしか見えなかったから』だと思っています。

 

で、今度はアベンジャーズと競演させるために再リブートし、『キャプテンアメリカ3 シビルウォー』でトム・ホランド演じる新たなスパイダーマンが初お披露目しています。

今作のピーター・パーカーは『どこにでもいそうな高校生』というか、その幼く未熟なヒーロー像に非常に親近感が湧きます。

 

前作がコケたとは言え、世界的に有名なアメコミヒーローであるスパイダーマンが、ハリウッドが手放すことができないドル箱スターであることは間違いなく、性懲りも無く作り直される度に映画ファンの中には

『またスパイダーマン作り直すのかよ』

という人もいるでしょう。というか、2年前にこの一報を聞いたときは同様の感想を抱きました。

 

 

とは言え、今作の面白さは間違いなく保証できます。

 

しかしながらこの再リブートを歓迎しつつも、やっぱりその一方で『未練がましい』と感じている身勝手な映画ファンです。

 


漫画も映画も小説もゲームも、あらゆる物語は『終わってしまう』ことで死や辛い別れを疑似体験させる役目を持っていると思っています。悲しみや喪失を乗り越えることで、人は新たな出会いに価値を見出すのです。

 

 

大好きな作品が終わってしまう悲しさ…それ故に何度も読み、鑑賞し、やがて飽き、別の作品に出会い、忘れた頃にまた作品と向き合って新しい発見をする…終わるからこそ『物語』はヒトの成長を促すのだと思います。


だからというべきか、オレはジャンプでいうアレやサンデーでいうソレが20年以上も延々と続き、それを子供たちが歳を重ね続けてなお読み続けるということに強い危惧を感じています。


大人が『儲かるから』『人気だから』『飯のタネだから』という身もフタもない理由でいつまでも完結しない、あるいはさせない『死なない物語』を子供たちに与え続ける罪の重さ。それは大人が子供の成長を奪うようなものだと思っています。


やがて終わったとしても10年もしないうちにパチンコになってる悲しさ。そして複雑な感情を抱きつつ、結局は抗えずにサンドに金を突っ込むオレ。まどマギとか完結して早6年ですよ。
来月に出るパチンコ楽しみですよオレ。


禁忌の黒魔術であれ何であれ、蘇った物語には会いたくなってしまう。なんと身勝手なオレ。


完結しないマンガを叩いておきながら、続編やリメイクだらけのハリウッド大作映画を嬉々として1800円払って鑑賞し続けるという、この矛盾した感情を抑えきれないオレ。


死んでもなお生かされる、彷徨う死体が地上に溢れかえる『屍者の帝国』や『ドーンオブザデッド』みたいなこの世界で(伊藤計劃もロメロも死んじゃいましたけど)、死なない物語と戯れ続けるオレがいつまで経ってもダメな大人なのは当然じゃないですかマジで。

 

さて、もう全然スパイダーマンの話してないですけど、クッソ面白かったのでぜひみなさん見てください。


実写版史上もっとも未熟でギミック満載で賑やかな物語であり、大人が子供に説教する話であり、子供が大人に成長する話でもあります。

 

…って、今年でもう33歳ですよオレ。
来週は『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 』を見てきます。


DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO