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9割は映画、たまにアニメや本の感想。

2021/08/10 何とかならんかったのか『スーサイド・スクワッド』

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クインちゃん目当てで観に行ったのはいい思い出

 

8月13日(金)から『フリーガイ』『ドントブリーズ2』『ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結』と、大作映画が一挙に3本も同時公開されます。

 

13日の金曜日ならそりゃもちろん『ドントブリーズ2』って言いたいところですが、アタクシは『ザ・スーサイド・スクワッド』を予約しました。前作と違ってR15指定なので、血みどろバイオレンスはこちらで堪能しようかと。

 

スースクはもちろん前作を観ています。予告編のカッコよさに痺れて公開初日に映画館に突っ込みましたよ。


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予告編”は”、超面白かった…まぁ映画ファンの皆様ならそこに異論はないハズです。

劇場で観たアタクシは、さすがに寝たりはしなかったものの、「早く終わんねぇかな…」と退屈しておりました。館内持ち込み禁止なのは重々承知しつつ、眠気覚ましにフリスクをひたすらボリボリ噛んでました。

 

厳重警備下にいる極悪犯罪者集団が暴れまくるお話とくれば、まぁ誰が撮ってもそれなりに面白い作品になるのは想像に難くないですし、予告編の出来が素晴らしい以上、それはそれは本編は面白い作品になるだろうと期待するのは当然じゃないですか。

 

…どうしてこうなった。

 

まぁ色々言いたいことがありまして、1つ目は、スーサイド・スクワッドの面々が極悪人集団には見えなかったことですよね。けっこうお行儀がいいというか、何なら守秘義務で身内を即座に打ち殺した黒人の女ボスのほうがよっぽど極悪じゃね?って思いましたよマジで。生殺与奪の権を握っているお役人からすれば、スースクなんて虫けらの集まりなのですよ。

 

2つ目はバイオレンス控えめだったこと。『マン・オブ・スティール』から始まる一連のシリーズである『DCエクステンデッド・ユニバース(略してDCEU)』の1つであった『スーサイド・スクワッド』ですけど、この作品だけレーティングを上げるわけにはいかなかったんでしょうね。犯罪者集団のバイオレンス全開アクションが堪能できるかと思いきや、血もロクに流れないヌルいアクションに終始してしまいました。オレは『パニッシャー ウォー・ゾーン』みたいな残虐アクションが観たかったんだよ!

 


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続編の『ザ・スーサイド・スクワッド』はR15指定でゴア描写満載らしいですから、ワーナーも本当は妥協の無いバイオレンスをやりたかったんでしょうね。

 

3つ目ですけど、アクションが何をやっているか分からない‼ ショッカー戦闘員みたいな敵の軍勢がみんな真っ黒で、戦闘シーンも夜ですから、闇に溶け込んでアクションがメチャクチャ見づらい。

 

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』とか『ブラックパンサー』とか『ジェミニマン』とか、画面が暗すぎて何やってるか分からないアクション映画は今日においてもたくさん生まれてますが、『スーサイド・スクワッド』もその類でした。誰得やねん!まぁCGの粗を誤魔化すためなんでしょうけど、自信ないなら作るなボケ!

 

まぁそんなわけで、大変不満な出来の作品でしたよ。作品は世界的にヒットしたみたいですけど、観客の99%はクインちゃんのケツ目当てだったに違いありません。

 

今作の監督であるデヴィッド・エアーも同様に、この映画に不満を持っていた。なぜなら劇場公開版は監督の意図に反して大幅に再編集、再撮影を経て作られた”別モノ”だったからです。

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「魂をこめたドラマがコメディにされてしまった」と語るエアー監督。まぁ『ダークナイト』並みにシリアスな作風だったのかもしれません。同様にDCEUの核となる作品だった『ジャスティスリーグ』もまた、劇場公開版は監督であるザック・スナイダーの作ったものとは全く違うテイストに再編集されています。監督が作ったディレクターズカット版(ザック・スナイダーカット)は、ファンの熱心な要望により、2021年3月に世界配信されました。

 

 

この『スーサイド・スクワッド』も、スナイダーカットがリリースされた直後、ファンからディレクターズカット版を公開するようネットで運動が行われているようです。

『スーサイド・スクワッド』ディレクターズカット版の存在が判明 ─ 『ジャスティス・リーグ』スナイダー・カットの製作決定で公開求める声広がる | THE RIVER

 

 

まぁファンの気持ちは分かりますけどね。監督が本当にファンに見せたかったバージョンが存在するのなら、それを観たいと思うのがファンたるものでしょう。でも、『ジャスティスリーグ ザック・スナイダーカット』(4時間バージョン)と劇場公開版『ジャスティスリーグ』を観比べた身としては、劇場公開版は正しいと言いたい。だって、明らかに問題があると判断したからワーナーは再編集を施したのであって、絶対にディレクターズカット版は冗長で重苦しい内容だったはずです。DCEUの作品である『マンオブスティール』も『バットマンVSスーパーマン』も、ひどくシリアスで重苦しくてユーモアの欠片も無かったですもん。その『バットマンVSスーパーマン』がコケてしまった以上、ワーナーが路線変更を求めたのは不思議ではありません。

 

デヴィッド・エアーカットもリリースされるなら観てみたいとは思いますけど、まぁ面白くないと思いますよ。ただでさえ退屈だった劇場公開版は、頑張って再編集して繕ってあの出来だったのだとオレは思ってます。スナイダーカットを観たオレの率直な感想は「クソ長い。オレが重役なら再編集を命じるわ」でしたもん。

 

さて、ジェームズ・ガン監督が手掛けた続編である『ザ・スーサイド・スクワッド』はどんな出来なのか…非常に楽しみです。クインちゃんもっとケツ出してくれ。

 

 

2021/08/05 レイトショーの思い出

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このコロナ禍で、夜の街はすっかり活気を失くしてしまいました。酒とパチンコが好きな底辺のアタクシとしては、パチンコで大勝したあとに居酒屋で1人、勝利に酔いしれるのが好きだったんですが、それも当分はお預け…オリンピック後は少しは規制が緩和されるのでしょうか。

 

もう一つ、我慢を強いられているのが、映画館のレイトショー。夜の自粛ムードで、多くの映画館は21時の営業終了を要請されているため、最近はアタクシも昼間の上映回に飛び込むことが多いです。

 

レイトショー…昔は好きでした。休日前夜、仕事が終わった後に行く21時の映画館。レイトショーの多くは深夜料金として割引されており(していない場所もある)、通常より安く映画を観られます。

 

それだけでなく、夜の静けさ、ガランとした場内がムード満点で、加えてマナーの悪い観客は少なく、本当に映画が好きな紳士たちが好んで利用するのがレイトショーでした。孤独なアタクシは専ら1人で映画を観るので、人の少ないレイトショーは大好きでしたよえぇ。

 

ま、いまはコロナが怖くて映画館に行かない人が多いので、よほどの人気作出ない限りは昼間でもガラガラ貸し切り状態だったりするんですけどね。

 

レイトショーで思い出深かったのは、その昔、映画『処刑人Ⅱ』(2010年公開 ショーン・パトリック・フラナリー&ノーマン・リーダス主演)を観に行った時のことです。


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オレの席の近くにメッチャかわいい女の子が座ったんですよ。よくある話ですけど。

 

女の子が1人で来るなんてドキドキじゃないですか。まぁでも大抵はポップコーンとコーラを抱えた彼氏が「お待たせー」とか言って後から来るんですよ。そんな光景を5億回くらい目にしては「ですよねー( ;∀;)」と心の中で何度叫んだか分からない。

 

でも…予告編が終わり、映画が始まっても、ポップコーンを抱えた彼氏はやって来ない。いつまで経ってもやって来ない。そして映画が終わり、場内が明るくなる。

 

オレの近くに座っていたメッチャ可愛い女の子は、荷物をまとめて1人、場内を去っていきました。きっとイケメンのノーマン・リーダス目当てで映画を観に来たのでしょう。1人で映画を観る若い女の子もいるんだなぁ…などと、オレは感慨にふけっていたのでした。

 

あ、当然ながら声はかけていません(当たり前だ)。

 

 

もう1つ思い出がありまして、『ガールズ&パンツァー』を彷彿とさせるロシアの戦車映画『T-34/レジェンド・オブ・ウォー ダイナミック完全版』の超絶極音調整バージョンを観に行ったときのことです。


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ド迫力の戦車アクションと、兵士たちのブロマンスが映画ファンと腐女子の間で話題となり、コアなファンが多かった本作ですが、アタクシがよく行く映画館チネチッタでは、場内が揺れるほどの超爆音仕様で、深夜24時に特別上映が行われたのですよ(2020年の2月上映)。

 

コロナ以前から働き方改革だのなんだのでファミレスが24時間営業を続々と止めていた当時、終電もなく片道切符を覚悟しながらアタクシは劇場に馳せ参じたのですが、そこには多くの”同志”がいました。この映画が観たくてやってきた多くの映画ファンたち。言葉は交わしませんでしたが、上映後の満足げな表情がすべてを語っていました。

 

「僕たちはいま、1つになったんだ…」

 

そんな思いを嚙み締めつつ、缶チューハイ片手に家まで5時間も歩いて帰りました。

そのシンドイ帰路も含めて、良い思い出です。

 

あぁ、今となっては19時を過ぎると街に出る気はすっかり失せてしまい、コロナが終わってもレイトショーに対して食指が動かない可能性が高いです。仕事が終わったらまっすぐ家に帰って、部屋で缶ビールを飲みながらNetflixで映画を観るのが日課になってしまいました。

 

ニューノーマル』なんて言われてますけど、習慣が変わってしまえば、かつての日々は二度とやって来ない。そういう意味ではコロナが憎い。いや、夜の街を死に追いやった政治家たちが憎いです。選挙に行きましょう。選挙に。

 

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2021/08/03 『パンケーキを毒見する』

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”毒味”じゃなくて”毒見”です。

第99代内閣総理大臣菅義偉を追った”政治バラエティ映画”『パンケーキを毒見する』を観てきました。公式パンフレットによれば、今作は”政治ドキュメンタリー”ではなく”政治バラエティ”とのことで、笑えるシーンは多いです。菅政権を茶化すようなアニメーションやナレーションが随所に入り、政治に関心のない客層にも楽しく鑑賞できるように作られています。


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今作は以前から観ておきたかった。Netflixで『なぜ君は総理大臣になれないのか』を観てから政治ドキュメンタリーに関心が高まっていた矢先に、映画評論家の町山智浩さんが今作をツイッターで紹介していたので、わざわざ渋谷まで足を延ばして観に行きましたよ。

 

何せ菅政権を批判する内容ですし、今作の公式ツイッターは何度か凍結されてます。わずか全国で19館でしか上映されていない今作は、政治的な圧力でいきなり上映打ち切りになるかもしれないわけですから、何が何でも観ておきたかったのですよ。

 

ここに一番の問題があって、政治に関心のない若者に観てほしくて監督はこの映画を作っているのに、その客層にこの映画が物理的に届かない。テレビ局にも政治的な圧力がかかっていてテレビCMも流せないのですから。映画ファンですらそもそもこういう映画に食指が動かないでしょうし。

 

まぁ『新聞記者』や『なぜ君は総理大臣になれないのか』がNetflixで配信されたように、半年もすれば動画サブスクで多くの人の目に届くと思います。それが即座に投票に繋がるわけではないでしょうが、まずは映画を観てもらうこと…それが始まりでしょう。

 

酒もタバコもやらず、早朝の散歩と腹筋運動を欠かさない菅総理。官僚の家系でもなく、段ボール工場での就職を経て政治の世界に飛び込んだ叩き上げの苦労人。

そしてパンケーキ大好き…若いコにウケる要素は多分にあるし、実際、菅内閣発足時の内閣支持率は65パーセント以上だったし、この人ならコロナから国民を救ってくれると信じた人は多かったのでは?

 

それが国会中継では書かれた文書を読み上げるだけ。野党からの質問に対してはまともに答えずに逃げ続けるだけ。以前オレが勤めていた会社にもこんな上司がいたけど、質問に対してキチンと答えない上司は信用するに値しないですよ。だから会社を辞めたんですけどね。

もちろん、運動を日課とする菅総理がモーロクしているハズが無いわけで、意図的にこういう態度を取っているのは明白なのです。

 

「こうした答弁を続けることで、国民の政治に対する関心が失われることを狙っているのでは」と答えるのは法政大学の上西充子教授。この映画にも登場しています。

 

確かにこの”作戦”は成功していると言えます。高い税金を納めている東京都民が、コロナ禍でいちばん世間から疎まれているというのに、7月4日に行われた都議選での投票率は42.39%…過去2番目の低さだそうです(NHKニュースより)。

 

普通ならこれだけ国民がナメられていたら、僕らは怒り狂って積極的に投票をするはずなんですが、この国ではそうはならない。いまだにワクチンを接種できない若い人は多く、医療は崩壊し、国民は自粛を強いられ、その一方でオリンピックは行われ、新作映画は延期され、コンサートも中止、居酒屋は営業を続けられない。みんなが怒っている。すべては現政権のせいなのです。国民のせいではありません。

 

でもみんな選挙に行かない。結果、コロナで不幸になるのは自己責任とみなされ、無能な政権が生き残るディストピアのような世界が続くのです。

 

来年も再来年も、ずっと俺たちマスクしながら生活しなきゃいけないの?フツーに地獄なんですけどマジで。みんな選挙に行こうぜ!

 

 

 

 

 

2021/7/29 『17歳の瞳に映る世界』

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この2人がトニカクカワイイ

『17歳の瞳に映る世界』を先日観てきました。上映館がメッチャ少ないので、多くの人がアマゾンプライムビデオやNetflixでの配信を待つでしょうけど、可能な限り劇場で観たほうがいいです。予告編をYouTubeで観て映画好きの嗅覚が疼いたわけですけど、自分の嗅覚は間違ってなかったです。

 


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17歳の少女オータムは病院で自分が妊娠していることを知る。中絶を望むが、彼女の住んでいる州では、母親の同意なしには中絶手術を受けられない。母親には話したくない。オータムはネットで自分でできる中絶方法を検索して試すも、うまくいかない。

 

オータムの身体の異変に気付いたのは、彼女と同じ職場でバイトをしている、いとこのスカイラー。スカイラーは職場の売上金をくすねて、オータムと一緒にニューヨークへと向かう。親の同意なしに中絶手術を受けられる病院を探すために…。

 

 

スカイラー「(自分が)男だったらと思う?」

オータム 「いつも(思ってるよ)。」

 

 

予告編の冒頭で流れるこのシーン。自分の体のことなのに、思い通りにできない歯がゆさ。キリスト教徒の多いアメリカでは、中絶を是としない思想は根強く、州によっては実質的に中絶を禁止としている法律もある。#MeToo運動や、女性の抑圧と解放を描いたハリウッド映画は最近は多く、今作もまたその一つである。

 

何せこの映画ではオータムが妊娠した経緯どころか、父親の素性すら描かれない。出てくる男はことごとくクズばかりで、だれが父親であったとしても、オータムにとっては妊娠は不幸でしかない。彼女は被害者である。

 

お腹の中の赤ちゃんは、彼女にとっては不快な”異物”なのだ。汚らしい肉塊なのだ。何より許せないのは、自分の体の問題でありながら、自分の力で解決できないことだ。

 

この、『身体的な自由の無さ』ってのは、男にとっては一生分からない問題だとは思う。国によっては、レイプされて妊娠したとしても、中絶を許されないことがあるのだ。被害を受けてもどうにもできない、人権侵害の問題である。

 

この映画を観て思ったのは、去年に公開されたアメリカ映画『スワロウ』だった。


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金持ちの家に嫁いだ美貌の女性、ハンター。経済的には何不自由ないけれど、彼女はかごの中の小鳥だ。夫は世間体や仕事優先で本当に彼女を愛しているか疑わしい。やがてハンターは衝動的にビー玉や画鋲などを飲み込む異食症を患ってしまう。 

 

中盤で明らかになるのは、ハンターが、母親がレイプされたことによって生まれたということ。母親は熱心な宗教家で、たとえレイプであっても堕胎を許さなかった。自分は穢れた出自であり、疎まれていると感じるからこそ、自分に自信が持てない。 

 

最後にハンターは、自分の人生を自由に生きるため、レイプ犯と対峙し、そして身ごもった胎児を中絶する。

 

異食症という奇異な症状は映画の見どころではあるが、それ以上にハンターの自立と自由を描いた作品である。彼女自身も最初は妊娠を喜んでいたが、夫が彼女に対してなんら愛情を抱いていないと知って失望する。妊娠は福音ではなく、胎児は忌むべき”異物”なのだ。

 

 

結婚と妊娠と出産は、必ずしも幸せなことではない。自由が何よりも尊い今の世界では、 女性だって自由のために独身を選んだっていいのだ。それは尊重されるべきだと思う。

中絶は決して倫理的には”良い”とは言えない。殺人に等しい行為だからだ。でも、女性が自身の幸福のために、自由のために、幸せのために、命を犠牲にすることを選択できる社会でありたいとも思う。

 

『17歳の瞳に映る世界』はセリフが極端に少なく、そして静かだ。でも彼女たちの辛さや痛み、怒りが十分に映像から伝わってくる。そして彼女たちは美しい。どこを切り取っても絵になる美しさ。そういう意味では、不謹慎な感想だけれど”目の保養になる美少女映画”でもある。ぜひ観ていただきたいと思います。

 

最後に、やっぱり望まない妊娠はするに越したことはないです。正しい性知識を身に着けるために、性をもっとオープンにカジュアルに語ってくれる大人が必要です。そして、いつでも相談できる大人がいることを社会が認知するべきです。日本では性教育YouTuberのシオリーヌさんが活躍していますので、彼女のチャンネルを通じて、男性も女性も、望まない妊娠のための第一歩を踏み出すのがよろしいかと。


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2021/07/26 サイダーのように言葉が湧き上がる

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デカすぎてカバンに入れにくかったパンフレット

 

アニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』を観てきました。花火と祭りが出てくるだけで夏らしさを感じさせてくれるなんて、ホントにコロナ(もしくはオリンピック)が憎い…実際、この映画も1年前に公開予定だったわけですし(コロナ禍で延期した)

 

俳句好きでコミュ障のイケメン。出っ歯がコンプレックスの美少女。そんな二人のボーイミーツガール映画。初々しいです。俳句少年のあだ名がチェリーってことも含めて初々しいです。(ヒロインのあだ名はスマイル)

 

「言葉は口に出さなくたっていいんだ」というコミュ障ボーイが勇気を出して想いを言葉にするなんて素敵じゃないですか。ヘッドホンを常時つけてて「心を閉ざしてます」アピールもクッソ古臭いけどいいじゃないですか。

 

「ベタだけど丁寧に作ってるなぁ~」って感じてしまうのは、いま大ヒット中の『竜とそばかすの姫』の脚本が雑すぎるからなのですよ。キャラクターが不可解な行動をせず、脚本に破綻も無いってことがどれだけ素晴らしいことか。話は地味だけど。

 

何より、イマドキ10代のSNSとの距離感がとてもリアルで、嘘くささが無い。細田守監督は『竜とそばかすの姫』のパンフレットで

デジモン~』から『サマー~』と、ずっとネットを肯定的に描いてきた世界で唯一の監督だと自分で思っています(笑)

 なんて答えてましたけど、嘘つくんじゃねーよ。安全地帯から匿名で石を投げるやつらに辟易してるから、『そばかす』ではアバター(匿名)と身バレにこだわってたんだろ。すずちゃんは細田守自身だろ。

 

対して、『サイダー~』のヒロインのスマイルちゃんは出っ歯というコンプレックスを抱えつつも、マスクつけて顔出ししてライブ配信してますからね。身バレなんてクソくらえなんですよ。何なら裏垢でエロライブチャットして投げ銭で稼ぎまくってるかもしれないし。マスクつけてたら尚更エロマンガっぽい展開で良いし(年頃の三姉妹が1部屋で一緒に過ごしてるあの家ではそれはないだろうけど)。

 

ライブ配信程度で”イマドキっぽい”とか思う時点でオッサンだろ」って言われりゃそれまでですけど、顔出ししてる時点で、『そばかす』よりはよっぽど”らしい感じ”がしましたよ。

 

君の名は。』から売れ線映画の定番要素となりつつある田舎(地方都市)の描写ですけど、「何をするにも、まずはショッピングモール」ってのはけっこう新鮮でした。「ロメロの『ゾンビ』やん」とか思いましたけど、アタクシも地元は何も無いから、学生時代はモールによく行ってましたし、田園風景を美しく描く最近のアニメには無いリアルを感じましたよ。 実際、数年前にアニメリメイク版『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の聖地巡礼旭市飯岡町に行きましたけど、商店街は土日でもシャッターが下りてましたし、灯台の近くのホテルは廃墟で、もう寂寥感たっぷりでしたよ。「そりゃみんなパチンコ屋かジャスコに行くよね」っていう。

 

キラキラした美しい自然を描くでもなく、都会への憧れを描くでもなく、村八分的で陰湿な人間関係を描くでもなく、否定も肯定もせず今の地方都市を描くって、地味ながら新しいことやってますよこの映画。しかもこれ、上述しましたけど、1年前に完成してたわけですからね。

 

そういう意味ではこれ、最先端のアニメ映画じゃないでしょうか。絶賛爆死中の本作ですが、ご覧になってはいかがでしょうか。

 

 

2021/07/25 タクシードライバー

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ポンポさん✕タクドラという衝撃コラボ

先日、立川シネマシティにて『タクシードライバー』フィルム上映版を鑑賞してきました(7月25日現在、上映期間は終了済み)。

 

アタクシは『タクシードライバー』が大好きでして、テレビ放映から始まり、VHS、LD、DVD、BD、配信を合わせて50回以上は観てます。そんな映画を映画館で拝めるなんて!しかもフィルム上映とは!

 

『映画大好きポンポさん』が映画化されなかったら実現しなかったかもしれない。ありがとうポンポさん。タクドラをスクリーンで拝めるなら、映画代と交通費なんて惜しくない!(とか言いつつ会員割引1000円で観たけど)

 

今回、フィルム上映ってことで、フィルム特有の埃っぽい映像、ボケた字幕、シーン切替時に右上に表示される白い〇印(『ファイトクラブ』で言うところの”タバコの焦げ跡”)、などなど、ブルーレイや配信の映像にすっかり慣れた昨今、新鮮な気持ちで名画の雰囲気を堪能しましたよ。

 

もう何十回も観てるからこの映画で新しい発見は無いと思っていたんですけど、ありましたよ。主人公トラヴィスがベッツィーやアイリスとカフェで食事をするシーンなんですが、どちらのシーンも、テーブルを挟んで対面で向き合ってないんですよね。

 

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ベッツィーとの食事シーン

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アイリスとの食事シーン

このシーンの不自然さに今まで全く気づきませんでした。これってトラヴィスの、女性に対するねじれや拗れ、コミュニケーション不全を表してるんですよね。

「あなたみたいな人は初めてよ」とベッツィーからは呆れられ、「おかしいのはわたしとあなた どっちのほう?」とアイリスからは笑われる。この似通ったやりとりの意味に今頃になって気づくオレ。有名な映画だから、たぶん誰かしらがこのシーンの意味を指摘してるとは思うんですが、オレにとっては新しい発見でしたハイ。

 

それにしても…トラヴィスってコミュ障ですけど、ダメ人間じゃないですよね。

不眠症とは言え、週6~7でバリバリ夜勤で働くし、ベッツィーみたいな美人をいきなり口説いちゃうし(しかも初デートでエロ映画を観に行くっていう)、銃を手にした途端にスパッと禁煙&筋トレ、さらにスリーブガン(袖に隠した銃)の固定具まで自作しちゃう。この迷いの無さ、憧れます。

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全世界の少年が憧れたスリーブガン(ジャキーン!)

そして最後はモヒカンになってカチコミじゃあ~!…って、テロ礼賛っぽく聞こえるのでこの辺にしておきますけど、孤独がトラヴィスを蝕みさえしなければ、彼はけっこう社会に貢献できたと思うんですよね。普通にスペック高いと思いますし。

 

まぁでも、孤独にして孤高だからこそ、トラヴィスは今でもオレにとってヒーローなのですよ。オレが好きなのはロバート・デ・ニーロじゃなくて、トラヴィスなのですよ。

 

2021/07/23 なんだかんだ言って細田映画は好き

細田守監督最新作『竜とそばかすの姫』を鑑賞して以来、アマゾンプライムビデオやNetflixで監督の過去作をもう一度全部観ました(デジモンやワンピースは観ていない)。

 

なんとなく観ていなかった『時をかける少女』や『バケモノの子』もこの機会に一緒に鑑賞しましたよ。ファンから評価が高い『時をかける少女』はいいとして、賛否両論ある『バケモノの子』は、面白いじゃないですかマジで。

 

脚本と構成力の弱さを指摘されている細田監督ですけど、「なんだかんだ言って面白い作品を作るよな~」ってのが細田監督に対するオレの評価です(何様だ)。宮崎駿に代わって、キチンと夏休みのド真ん中にファミリー客を楽しませる映画を作るじゃないですか。

 

まぁ満場一致で不評だった『未来のミライ』が壮絶にズッコケただけであって(アレはちょっと俺も擁護できない)、基本的にはスクリーン映えする娯楽大作を作ってますし、興行収入だって『おおかみこどもの雨と雪』と『バケモノの子』が共に40億円を超えてますからね。シリーズものでもタイアップでもなく、単発オリジナル映画でこれだけ稼げるなら、立派な”巨匠”ですよ。

 

その細田守監督の最新作である『竜とそばかすの姫』も、封切りから連日、デイリー興行収入ランキングではずっと1位をキープしてますし、この勢いなら、細田監督の過去最高ヒット作である『バケモノの子』の興行収入(58.5億円)は超えるでしょう。

 

「なんだお前、こないだそばかすの脚本をボロクソ書いてたじゃん」とか言われそうですけど、雑な脚本でもオレは楽しみましたよ。そもそもミュージカルシーン目当てで観に行ったわけですし、スクリーン映えする映像美に酔いしれて、IMAX入場料(2500円)の元は取れましたよえぇ。

 

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まぁ今後も細田守監督作品には「脚本ガ~」という感想はついて回ると思いますが、そばかすの大ヒットが間違いない以上、今後も”監督らしい”作品が作られ続けることでしょう。ただ、ホントに『未来のミライ』みたいな作品は勘弁していただきたい。

 

くんちゃんはウザガキだし声は合ってないし、何の脈絡も説明もなくタイムトラベルしちゃうし、おまけにケツ穴に尻尾ブッ刺して絶頂ケモノ化とか、子供連れて観に来た親御さんはどんな顔してたんでしょマジで。

 

あの作品はある意味で、細田守監督の”集大成”なんでしょうね。主に悪いほうの。今後はご自身の性癖を封印すべく、登場人物の平均年齢は高めで、巨乳の美女が出てくる作品を作るといいんじゃないでしょうか(夏休み映画じゃねぇしそれ)。